アドリブって、ふっと突然降りてくるものだと思っていたが
実は10用意して10捨てる準備の積み重ねの先にあるんだということに
プロになってから気づいた。
たとえば、デイズニーランドのカストーディアルキャストが、
「ご不要なものがございましたらお預かりします」と
ゴミ箱を押しながら通りがかる。
こっちが笑いをとろうと「ボクかな」って言うと、
すかさず、
「大丈夫、まだ充分使えますよ」と返してくれる。
なんて、気の利いた一言なんだろう。
理想のアドリブだ。
ボクもあなたも、そして周りにいる皆も、
全員ハッピーに感じられるのがいい。
ほんの数秒間だけど、この一言には
思いっきり楽しんで欲しいという気持ちが込められている。
だからこそ、突然湧いて出たものじゃないんだ。
カストーディアルキャストの在り方と
これまでの積み重ねがあってこそのアドリブなのです。
MC司会も全く一緒で、当日までにあらゆる想定をして準備をするけど、
いざ本番になったら、使えるものなんてほんの一握り。
場合によっては全部捨てるはめになる。
それでも、その準備に精魂注いだ在り方で
目の前の聴衆と向き合っていると、
結果として、今の状況にぴったりの言葉が出てくるのです。
繰り返しますが、それはふっと降りてきたものじゃなくて、
確実に存在していたモノ。
倉庫の奥から「これがぴったりだよ」って、
アシスタントが持ってきてくれたような感覚に近い。
だから口にした瞬間、
「これって、1ヶ月前に準備した別のイベントの決め台詞だ」と
気づくことが多々あります。
こういうと、結局、どれだけ引き出しがあるかってことでしょう?
と思うかも知れませんが、アドリブが生まれる要素は
断じて情報量だけではありません。
いつだったか忘れちゃったけど、
紅白歌合戦で山本耕史さんが前川清さんの紹介を
「山川さん、・・・じゃなくて前川さん」
と間違えた時がありました。
司会者としては、大失敗です。
会場内には救いの笑いが起きていましたが、。
山本耕史さんは「しまった!」という顔をしていました。
でも、そこを見逃さなかったんですね。
少し経った絶妙なタイミングで
「山川さん、・・・じゃなくて前川さん」と、
もう一回言っちゃった人がいた。
みのもんたさんです。
今でも鮮明に覚えています。
「山川」と言えば笑いが起きるのは誰もが想像できていました。
でも、わかっていても、前川さん本人の前で
実際に言えるかどうかは別問題。
ボクなら…やっぱり言えない。
そんな度胸はありません。
でも、みのさんは言っちゃった。
結果、あの一言で、山本さんの失敗が最大限にフォローされ、
なおかつ、前川清さんも目立つ事ができたと、
その場にいた観客はもちろん、
お茶の間の視聴者の誰もがそう感じたことでしょう。
こういう気の利いた、機転の利いた、皆がハッピーになるアドリブは、
決して、語彙・知識・情報の多さだけでは生まれません。
同じ事をボクが言っても空気を変えることはできない。
絶対に成立しないのです。
やっぱり最後は、その人そのものが大事な要素になる。
アドリブもBe(在り方)から生まれるんですね。
なお、タイトルのスペアリブは本文とまったく関係ありません。
ただのアクセス稼ぎです。許して(笑)
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