縁あって、塾の講師を務めて今年で3年目になる。
ようやくユーティライゼーションがどういうものか、
知識としてではなく、心の深いところで、
いかに真剣に向き合わないと見つけられないものなのかもわかってきた。
勉強ができる子を勉強ができるようにするのは誰でもできる。
でも、勉強に興味がない子を(勉強ができない子は誰一人いない)
やったら面白いと気づかせられないのは、100%ボクの責任だ。
お恥ずかしい話だが、
以前、「あと1㎝、親子で心通わすコミュニケーション術」と題して
思い通りにならない子供と楽しむ方法を紹介させて頂いたことがある。
娘がまだ保育園に通っていた頃だったので、
洋服を着せたい時とか、いくら言っても朝起きない時にどうするか?
そんな時こそ「ユーティライゼーションですよ」みたいな内容だ。
手元のレジメを見ると、
1.パパとママとどっちにやってもらいたい?(人の選択)
2. 白のパンツと青のパンツ、どっちがいい?(物の選択)
3.じゃぁ、自分で選ぶ?(委ねる)
4.ママとどっちが早く着られるか競争しよう!(競争)
5.パンツがさみしいって~(擬人化)
6.とりあえず、ご飯食べてから着ようか(結合・順番替え)
7.かっこよく着るとこ見せて~!(持ち上げ)
8.じゃぁ、これは、あにかちゃんに着せよう(ライバル)
9.先にママに着せて~!(逆転)
10.歌いながら着られる?(結合・チャレンジ)
11.「バカ殿!」と叫ぶ。(志村けんがパンツ1枚から早き替えするモノマネ)
朝起きない時は、
12.まだ、目を開けちゃダメ! 問題です!これは誰でしょう?(クイズ)
と書いてある。
拙著「話がわかりやすいと言われる技術 スケッチトーキング」(大和書房)でも
お笑いコンビ、オードリー 春日さんの立ち姿を利用した
ユーティライゼーション(モノマネ)を紹介させて頂いた。
確かに、当時、我が家では、「競争」「擬人化」「クイズ」「モノマネ」の4つが
比較的うまくいっていた。
子供の感性によって当てはまるものが違うけど、
だいたいは上の12個のいずれかで動き出してくれる。
歯磨きをしなかった子が「パパのを磨いて」という「逆転」を使ったら
するようになったという感想も頂いた。
はっきりいって、このどれかでやる気になってくれなかった場合は、
潔くあきらめて下さいって偉そうに話してました。
「イヤイヤにイライラせずに楽しもう!」
「子供のやる気のツボや個性を理解することに繋がりますよ!」
でも、これまた当たり前ですが、
自分でも実はそうだろうなぁと覚悟はしていましたが、
塾の講師をして、そのノウハウはことごとく崩されます。
あー恥ずかしい。
「いくら言っても、素直に聞いてくれない。動かない。
何がそんなにイヤなのか?!
そんな時は、思い通りにならない子供と知恵比べを楽しむべし。」
なんて、言ってた自分。
繰り返すけど、勉強ができる子を勉強ができるようにするのは誰でもできる。
でも、勉強に興味がない子を、席についた瞬間寝てしまう、
いくら言っても宿題をやってこない、消しゴム切って投げている・・・
そんな子をいかにヤル気にさせられるかでしょう。
ひとりひとり違うんだから、12個のいずれかにあてはまるわけがなく
特に中学生以上になると小手先のテクニックは見抜かれる。
最初はちょっと得意のマジックなんか見せてきっかけは作れても、
勉強嫌いな子に自らの意思で勉強してみようと、
この時間はがんばってみようと大きな推進力を持たせる
ユーティライゼーションをするのは簡単なことではありませんでした。
ボクが尊敬する石井裕之氏から教わったシーディングも
本当の意味でできていなかった。
穴があったら入りたいくらいの反省しきりの3年間でしたが、
ここにきて、ようやく、2年前に植えた種が芽を出し始めたんじゃないかと
変化を感じられる子があらわれました。
もちろん、それはボクではなく、
誰か別な人が種を植えて芽を出したのかも知れない。
それでも、そんなことはどうでもいいことで、
ボクはその子を通じて、真剣に向き合うという在り方を学ばせて頂きました。
ミリトンエリクソンのあの魔法のような技は、
間違いなく、そういう過程の中で辿り着くものなんだろう。
Wizard of the Desert をもう一度観てみたくなった。
今のボクだったら、また違う気づきが得られるかも知れない。